本の山 〜お薦めの本、山積みに〜

今日か明日、書店に行きたくなる書評

1953年の児童書『みんなの世界』に込められた願いとは

みんなの世界 (岩波の子どもの本)作者:マンロー・リーフ出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1982/01/01メディア: 単行本 児童書にしてはやや無機質なタイトルと、落書きスレスレの脱力系イラスト。本書は民主主義のルールを、小学生の日常生活を引き合いに易…

女性美を兼ね備えた青年内科医が女性関係と人生に悩んだ挙句…(舟橋聖一著『薔薇射たれたり』)

『薔薇(ばら)射(う)たれたり』は昭和21(1946)年、雑誌『女性』に連載された作品である。恋敵の女性同士が電車で向かい合わせになるというような不自然な偶然がいくつか見られたり、語り手の「私」が途中からいなくなったりと、完成度を問題にしようと…

昔の日本人はオーロラをどう見たか。そもそも日本でそんなにオーロラが見えたなんて。

オーロラの日本史: 古典籍・古文書にみる記録 (ブックレット“書物をひらく”)作者:岩橋 清美,片岡 龍峰出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2019/03/15メディア: 単行本 日本の古い史書や日記には、オーロラを目撃したものと思われる記録が多数残っているという。…

スイーツの「歴史」の福袋、みたいな一冊

日本の食文化 6: 菓子と果物作者:出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 2019/10/24メディア: 単行本 お菓子や果物は生存用の食糧というよりは、味覚を楽しむ嗜好品である。ではご先祖さまはいつから、どんな風に甘味を食するようになったのだろう。本書では、…

目立つ自己啓発本は電車に向かない。一人の空間で読むに限る。

7(セブン) 1週間のうち何日を特別な日にできるだろう?作者:ダン・ゼドラ,Dan Zadra出版社/メーカー: 海と月社発売日: 2014/11/28メディア: 単行本 ポジティブな言葉を自力で生産できないとき、人は本にそれを求めるのだろう。2019年12月のある夜、東京駅前の…

安藤哲也「男性の育休促進に向けて必要なこと」(『地方公務員月報』2019年11月号)を読んで思ったこと

1.地方公務員月報という月刊誌 『地方公務員月報』は、地方公務員制度の正しい理解と運用の指針を示す月刊誌である(総務省公務員課編)。想定読者は自治体の人事担当者だと思われる。自治体の取組みを応援しつつやんわり国の言うことを聞かせようとする姿…

富豪の人妻と年下でイケメンでマザコンな若い外車セールスマンの恋、どうなる?

【書評】若いセールスマンの戀 [著]舟橋聖一戦後間もない昭和29年頃、外車のセールスマンで23歳の雪雄は、同僚と共に赴いた得意先の資産家・滋本家の由香子夫人に一目ぼれする。主人が不在のため夫人を外車に乗せ、同僚の運転で試乗させる。屋敷に帰着後、…

「クリエイティビティ+鉄道愛」が生んだ刑法学の入門書、出現。

どこでも刑法 #総論作者: 和田俊憲出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2019/10/09メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 【書評】『どこでも刑法#総論』[著]和田俊憲刑法学は「ある人が誰かの利益を害したとして、そこに犯罪が成立する…

【書評】スナックの言語学 距離感の調節[著]中田梓音

スナックの言語学: 距離感の調節作者: 中田梓音出版社/メーカー: 三元社発売日: 2019/10/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 研究者にしてスナック女子(スナ女)の著者が、スナックのママの「『痒いところに手が届く』接客の技術」を言語学の観…

【書評】南の島のよくカニ食う旧石器人[著]藤田祐樹

南の島のよくカニ食う旧石器人 (岩波科学ライブラリー)作者: 藤田祐樹出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2019/08/24メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 11月も中盤。国内旅行のパンフレットがカニツアー色の赤に染まる。秋の風物詩である。しかし、…

昭和陸軍きっての逸材、永田鉄山は令和の世にも本になる。さすが。

永田鉄山と昭和陸軍 (祥伝社新書)作者: 岩井秀一郎出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2019/07/01メディア: 新書この商品を含むブログを見る 【書評】永田鉄山と昭和陸軍[著]岩井秀一郎(2019年7月、祥伝社)昭和10(1935)年8月12日午前9時45分、東京は陸軍…

【書評】夏みかん酢つぱしいまさら純潔など(鈴木しづ子句集、小出蘭太評伝)

夏みかん酢つぱしいまさら純潔など (河出文庫)作者: 鈴木しづ子,川村蘭太出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2019/06/05メディア: 文庫この商品を含むブログを見る 失踪した伝説の女流俳人鈴木しづ子を追う2冊目の句集『指環』出版記念会から半年後の1952…

住職のための情報誌『月刊住職』を読んでみた

月刊住職 2019 9―寺院住職実務情報誌作者: 興山舎出版社/メーカー: 興山舎発売日: 2019/10/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 『月刊住職』は寺院住職のための情報誌である。仏教書に独特の難解さはなく、住職ではない私でも楽しめる。記事の本…

『バビル2世』再読② バビル2世の正義感はどこから来るのか

バビル2世 (2) (秋田文庫)作者: 横山光輝出版社/メーカー: 秋田書店発売日: 1994/10/01メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る 小学生の頃、将来の夢を答える場面で「世界征服」と回答する子がクラスに1人はいた。世界征服という言…

『バビル2世』再読

バビル2世 (1) (秋田文庫)作者: 横山光輝出版社/メーカー: 秋田書店発売日: 1994/10/01メディア: 文庫 クリック: 8回この商品を含むブログ (11件) を見る 人間が高い塔を作る不思議な夢を毎夜見るようになった少年、浩一。その夢は自分を長年待つ人物からの…

【書評】骨は語る 徳川将軍・大名家の人びと

骨は語る 徳川将軍・大名家の人びと作者: 鈴木尚出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 1985/12/01メディア: ハードカバー購入: 3人 クリック: 40回この商品を含むブログ (15件) を見る (鈴木尚著、1985年12月発行、東京大学出版会、221頁、5,000円+税)…

模造紙不安(もぞうしふあん)

今週のお題「わたしの自由研究」 模造紙不安(もぞうしふあん、英:simili paper anxiety)とは、小学生時代に課された夏休みの自由研究における失敗体験や劣等感が原因で、成人後も、自由研究の成果の記載によく用いられる「模造紙」に反応してストレスを感…

切なくも美しい怪談

今週のお題「残暑を乗り切る」 怪談 (英文版) ― KWAIDAN (タトルクラシックス )作者: ラフカディオハーン(小泉八雲),Lafcadio Hearn出版社/メーカー: チャールズ・イ・タトル出版発売日: 2004/10/01メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 2回この商…

「まさかりの懐妊、なーんだ?」「小野小町!」

【書評】中世なぞなぞ集 [編]鈴木棠三 (2019年7月重版(1985年5月初版)、岩波文庫、454頁、1,130円+税) 中世なぞなぞ集 (岩波文庫 黄 130-1)作者: 鈴木棠三出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1985/05/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 4回この商品…

「思考回路だけ身につけろ。そしたら集中力なんかパッコ~ンだ!」(本文より)

【書評】集中力のひみつ [著]伊藤丈恭(2018年4月刊、芸術新聞社、235頁、1,600円+税) 集中力のひみつ作者: 伊藤丈恭,村田善子出版社/メーカー: 芸術新聞社発売日: 2018/03/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る クリエイティブ部門への異動を…

ムダ毛と脱毛をめぐる人の営み

【書評】脱毛の歴史 ムダ毛をめぐる社会・性・文化 [著]レベッカ・M・ハージグ [訳]飯原裕美 脱毛の歴史作者: レベッカ・M・ハージグ,飯原 裕美出版社/メーカー: 東京堂出版発売日: 2019/07/11メディア: 単行本この商品を含むブログを見る (2019年7月…

忍者の、理想と現実と

【書評】忍者の精神 [著]山田雄司 (2019年5月、KADOKAWA、199頁、1,700円+税) 忍者の精神 (角川選書)作者: 山田雄司出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2019/05/24メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 忍者は確かにいたらしい。しかし、黒ずくめ…

狂騒の80年代の写真週刊誌を1800円(税抜)で一気読みしてる感じ

【書評】金ピカ時代の日本人 狂騒のニッポン│1981年~1991年 [写真と文]須田慎太郎 (2019年7月、バジリコ、350頁、1,800円+税) 金ピカ時代の日本人作者: 須田慎太郎出版社/メーカー: バジリコ発売日: 2019/07/07メディア: 単行本この商品を含むブログを…

太平洋を1年5か月漂流した後、アメリカ、アラスカ、カムチャッカ経由で帰国した船長の話(200年前)

今週のお題「海」江戸時代後期、1年5か月もの間、太平洋上を漂流し生還した日本人がいた。史実に残る日本最長記録との説もある。彼らは1813年11月、督乗丸なる船で江戸から愛知方面に航行中暴風雨にあい、太平洋を漂流する。船上での凄惨な日々が1年5か月近…

かぐや姫『僕は何をやってもだめな男です』(1972年:伊勢正三作詞、よしだたくろう作編曲)

今週のお題「わたしの好きな歌」 大学1回生の12月、下宿を始めた。風呂なしの6畳一間である。必要最小限の家財をかき集めたが、カーテンに気が回らなかった。暖房器具とカーテンがない神戸の冬は想像以上に寒かった。 そして、お金がなかった。新しいバイト…

こんなはずではなかったと、彼は死刑の日の朝、言った

【書評】「カルト」はすぐ隣に オウムに引き寄せられた若者たち [著]江川紹子 (2019年6月発行、岩波書店、223頁、900円+税) 「こんなことになるとは思っていなかった」地下鉄サリン事件の実行犯の一人は死刑執行当日の朝、こう言ったという。なぜ真面目…

白書の季節が来ましたよ(公務員白書)

【書評】公務員白書(令和元年版) [編]人事院 (2019年6月発行、日経印刷、247頁、2,750円+税) 公務員白書 令和元年版作者: 人事院出版社/メーカー: 日経印刷発売日: 2019/06/01メディア: 大型本この商品を含むブログを見る 白書好きにはうれしい季節が…

有能王子たちのおとぎ話。大人の楽しみ方。

【書評】セレンディップの三人の王子たち ~ペルシアのおとぎ話~ [編訳]竹内慶夫(2006年10月発行、偕成社、201頁、700円+税) セレンディップの三人の王子たち―ペルシアのおとぎ話 (偕成社文庫)作者: 竹内慶夫,増田幹生出版社/メーカー: 偕成社発売日: …

「アヴェロンの野生児」事件の真相は?

【書評】謎解きアヴェロンの野生児 [著]鈴木光太郎(2019年6月発行、新曜社、178頁、1,800円+税) 謎解き?アヴェロンの野生児作者: 鈴木光太郎出版社/メーカー: 新曜社発売日: 2019/06/05メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 1…

はだしの禅僧 関大徹と一対一で向かい合える充実感について

【書評】食えなんだら食うな [著]関大徹(2019年6月刊、ごま書房新社、261頁、1,800円+税) 食えなんだら食うな作者: 関大徹出版社/メーカー: ごま書房新社発売日: 2019/06/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る まず書名に威力があった。わたく…