負け犬の読書灯 〜本はいい。無秩序にご紹介〜

今日か明日、書店に行きたくなる書評

2022-01-01から1年間の記事一覧

気球への乗船、あるいは男の名前の忘却【泥沼と気球2】

わたしは気球に乗ると決めた。あの男にはあなた以外の人と気球に乗るからと告げた。浜風のまだ暖かい夕暮れだった。誰かのクルーザーが波に揺られて上に下の動いていた。 あの男は動揺していた。早口で少しだけ何か言ったはず。そして徒歩で立ち去った。一度…

泥沼と気球、あるいは大切な人との別れ【泥沼と気球1】

山の中に汚く臭い泥沼がある。俺はその泥沼に首までつかる。何とか這い上がらなければ沈み、重い泥が肺に流入する。死ぬ。はあはあを息を切らして這い上がろうとする。木の根や枝にしがみつく。泥と汗で滑る。 彼方から、気球がこちらの方向に向かってくる。…

【本の紹介】苦しみの中から立ち上がれ ―アントニオ猪木「闘魂」語録―

苦しみの中から立ち上がれ アントニオ猪木「闘魂」語録 (宝島SUGOI文庫)作者:アントニオ猪木宝島社Amazon 巻末の「完全年表 アントニオ猪木 過激なる77年の軌跡」が過激すぎる。1943年横浜で生まれ、13歳でブラジル移住。そのサンパウロで力道山にスカウトさ…

【本の紹介】『北極探検隊の謎を追って 人類で初めて気球で北極点を目指した探検隊はなぜ生還できなかったのか』(著:ベア・ウースマ、訳:ヘレンハルメ美穂)

北極探検隊の謎を追って: 人類で初めて気球で北極点を目指した探検隊はなぜ生還できなかったのか作者:ベア・ウースマ青土社Amazon 探検家たちが人類初の北極点到達を競った19世紀末。気球で北極点を目指した3人の男たちがいた。彼らアンドレー北極探検隊は、…