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今日か明日、書店に行きたくなる書評

【書評】見世物 7号 [編]見世物学会・学会誌編集委員会

見世物7号

見世物7号

まず、表紙のモノクロ写真が目を引く。場所はサーカス小屋の裏か。舞台衣装に大きな頭飾りをつけた中年女性と、ワンピース姿のチンパンジーがこちらを見ている。しみじみと眺めていると、二人がすぐそこにいるような錯覚が生じる、妙な写真だ。内容に期待が高まる。

 

本書は「嗅覚に優れた見世物マニアと話がしたい」との呼びかけに集まった人が設立した、見世物学会の学会誌の第7号。テーマは見世物一色。執筆者たちが(設立趣旨どおり)マニアックな視点で関心分野を深めている。本号のテーマに関心のある方はもちろん、その独特な世界がどんなのか少し気になる、という方にもお薦めしたい。

 

所収のレポートは多数にわたる。いくつかご紹介したい。

 

亀井好恵「興行女相撲の残したもの」

女相撲は、昭和30年代後半まで国内外で巡業されていたという。ここでは、明治期の一座の立ち上げから日本各地への巡業の様子が描かれる。注目すべきは、見世物である女相撲を巡業した先の郷土文化に、その影響を思われる風習が残っている事例あり、との指摘だ。亀井氏には女相撲に関する別著があり、そちらも併せ読みたいところ。

 

細馬宏通「浅草十二階の見世物性」

明治23年の東京に現れた12階建の高塔、浅草凌雲閣、通称浅草十二階。その建設から関東大震災による倒壊、解体までの約33年間を、「見世物」という視点から解き明かす。塔の内外を見せる側・見る側の興味や欲望、理想と現実を、豊富な資料から明らかにする。

 

林幸治郎「歩く広告見世物?チンドン屋の迷宮に迷い込んでの物語」

これも読みごたえあり。立命館大学在学中にチンドン屋の活動を始め、卒業後すぐにプロの世界に飛び込んだ林氏。自身の半生、チンドン屋の歴史と実態、仕事への自身の思いを語る。

 

出来事やモノは、放っておけば案外あっさり人の記憶から消えてしまう。それを「嗅覚の優れた見世物マニア」たちが発見し、読み取り、慈しんでいる。それぞれの原稿は短めで、図や写真が多く、見ているだけでも楽しい。参考文献を手掛かりに深掘りし、更なる深みにはまってみたい。そんな欲望をもかきたてる一冊だ。

 

新宿書房201811月、2,000円+税)