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今日か明日、書店に行きたくなる書評

白書の季節が来ましたよ(公務員白書)

【書評】公務員白書(令和元年版) [編]人事院

20196月発行、日経印刷、247頁、2,750円+税)

 

公務員白書 令和元年版

公務員白書 令和元年版

白書好きにはうれしい季節がやってきた。国から発行される様々な白書の最新版は、6月頃から出始める。つまり今から旬。カツオでいえば秋である。みかんでいえば冬である。白書の魅力は、大量の情報が整理されていること。通読するのはしんどいが、パラパラ眺めてみるだけで、知らない事実が山盛りだ。行政文書に特有の固さやあいまいさがあるが、随所にみられる人間臭さ。ツッコみどころだってある。白書は面「白」い「書」物なのである。


私が特に好きなのが人事院編『公務員白書』。人事院は、国家公務員の人事行政の公正と職員の利益の保護を担う第三者機関だ。第2部で、国家公務員から寄せられた苦情相談を一挙分析している。さすがは第三者機関。通常、従業員の苦情を一挙公開する組織はない。早速、見てみよう。

まず目を引くのは相談件数の激増ぶりだ。平成30年度の1,443件は前年度比約30%の増、特にパワハラの相談件数の増が著しい(+105件)。本書ではその要因に、パワハラという言葉の認知度の高まりと、自府省で相談しにくいケースの増を挙げる。でもそれだけでこんなに増えるか?と思っていると、続いて気になる記述が。最近の意識調査で30代職員の6割が厳しい指導をパワハラと捉え、あるいは強い不満を感じたと回答したが「こうしたことも相談が増加している背景にあるのではないかと思われる」という。パワハラに至らない指導までそう受け取られる傾向があるとみているようだ。(ただ、実際にパワハラ事案が増加している可能性も捨てきれない。)

解決策のほうはどうか。思い切って要約すると、コミュニケーションの促進、若手職員のモチベーションを引き上げる取組み、管理職員のマネジメント能力の向上、の3点である。全般的に、管理職員に解決を求めているようで気がかりだ(どこの組織でもそうだが)。国の役人の方の激務ぶりはみんなが知っている。人が増やせない事情、若年職員の意識の変化、管理職員のプレイングマネージャ化の現状で、お前が変われ、うまくやれ、と言い続けるのは少し酷にも思える。おそらく執筆陣は気づいていた。でもそこに結論せざるを得なかった。きっとこのジレンマを乗り越えるために、第三者機関である人事院の存在意義がある。人事院にしかできない取組に期待したい。

白書は、一見淡々とした報告書だが、そこにドラマを見出すことも可能だ。この夏は、取れたての白書をどうぞ(最後は俵万智風に)。