負け犬の読書灯 〜本はいい。無秩序にご紹介〜

今日か明日、書店に行きたくなる書評

狂騒の80年代の写真週刊誌を1800円(税抜)で一気読みしてる感じ

【書評】金ピカ時代の日本人 狂騒のニッポン│1981年~1991年 [写真と文]須田慎太郎

20197月、バジリコ、350頁、1,800円+税)

 

金ピカ時代の日本人

金ピカ時代の日本人

バブル時代の文化のリバイバルが流行っている。去年あたり荻野目ちゃんの歌がよく流れていた。本書はそんな「金ピカ時代」の80年代からバブルがはじけた90年代初頭までの「狂騒」を、写真と文で振り返る。この時代を体験した人にも、平野ノラあたりから入った人にも、興味深く読める好著である。

著者の須田慎太郎氏は写真週刊誌「FOCUS」(2001年休刊)専属の報道写真家として、リゲインCMよろしくまさに24時間働いていたようだ。「何かが起こったならば、その被写体に向かって恐れずに突き進むだけだ。(p.284)」という言葉通り、組事務所に連日通って組長の撮影を敢行したり、火災中の老人ホームに入り消火救助活動中の現場を撮影したりと、結構体を張っている。

写真週刊誌というと、物陰からこっそりパチリというイメージがある。本書にもそういう写真はあるが、案外正式に取材を申し込んだりしている。それでいて自然な表情を引き出すあたり、さすがはプロ。焼鳥屋で食事中のカーター米大統領のリラックスした笑顔。千昌夫氏との離婚で多額の慰謝料を受けたシェパードさんは高級外車のボンネットに座って笑顔で写真に収まる。入院中の人には毎日のように花束を持って病室に見舞いに行ったりと、時間をかけて間を詰める。あくまで目的は特ダネ写真なのだろうが、その過程で生じた信頼関係のようなものがあって、だからこそ表現できる息づかいのようなものが写真から感じられるのだろう。

事件の顛末、撮影エピソード、その時期の出来事を綴る文章が、また写真に負けず劣らず素晴らしいのである。

本書が取り上げる事件を列挙するときりがないが、飛行機事故やロス疑惑などの痛ましい事件、リクルート事件などの政治的事件、ノーパン喫茶など性風俗に関する風潮など、まさに狂騒というに相応しい。10年分の写真週刊誌を一気読みできる本書。こういう本にこそしっかりとは流行って欲しいものである。