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『バビル2世』再読

バビル2世 (1) (秋田文庫)

バビル2世 (1) (秋田文庫)

人間が高い塔を作る不思議な夢を毎夜見るようになった少年、浩一。その夢は自分を長年待つ人物からのメッセージだと悟る。使者である怪鳥ロプロスに導かれた先は、砂漠に立つバベルの塔の遺跡。5千年前に不時着した一人の宇宙人が、塔の内部に優れた科学技術の成果を残していた。その継承者に選ばれたのが浩一(バビル2世)だった。彼はコンピュータからの教育により自らの超能力を知る。そして同じく超能力者であるヨミの世界征服計画を阻止するため、超能力、高度にコンピュータ制御されたバビルの塔、3つのしもべ(ロプロス、ポセイドン、ロデム)を駆使し、りりしい学ラン姿でヨミに挑む。

初出(1972年)からもうすぐ50年、アニメの勇壮な主題歌と共に有名な作品を久々に再読した。超能力という「静かに念じる」印象のパワーをここまでど派手なアクション漫画に拡張している発想が斬新だ。

超能力と戦闘アクションを繋ぐのは、超能力を攻撃に用いる発想である。バビル2世もヨミも、超能力で敵を殺めたり、ビルを破壊したりするほどの力を持つ。しかしそれでは単純に超能力が上回る方が勝りかねない。もともと超能力のうえでは(どうやって比較するのか分からないが)バビル2世のほうが上。実はかつてヨミがバビルの塔の後継者候補だったが、能力不足との理由で、塔の記憶を消去され砂漠へ放り出されていたのである。

二人の間にある本質的な力量の差。これを対等な戦いにするための工夫が施されている。


(1)資金力と組織力に差をつける
バビル2世の味方はバビルの塔と3つのしもべしかない。国家保安局という官庁や自衛隊と共闘する場面もあるが、勝敗の決め手になっているとはいい難い。ヨミは何度つぶされても巨大な基地を再建する資金力と、常時多数のスタッフやシンパを有する。その意味で優勢である。

(2)3つのしもべをヨミにも操縦させる
3つのしもべがバビル2世だけでなくヨミの超能力にも反応するようにすることで、バビル2世側に一定のハンデを与えている。ここでトドメだ!というシーンでしもべが突然バビル側を攻撃したり、指示が混線してフリーズしたり、という具合である。

(3)ヨミの能力を漸次向上させる
ヨミは3度落命しているが、復活のたびに能力を高めることになっている。バビル2世に迫りくるヨミの姿に読者はハラハラし、両者の戦いに胸を熱くするのである。

文庫版で全8巻。アニメでご覧になった世代の方にも、若い方にも知っていただきたい名作である。研究し甲斐のある作品だが続きは他日を期したい。(鉄)