
- 作者: 興山舎
- 出版社/メーカー: 興山舎
- 発売日: 2019/10/01
- メディア: 単行本
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『月刊住職』は寺院住職のための情報誌である。仏教書に独特の難解さはなく、住職ではない私でも楽しめる。記事の本数がとにかく多い。今回採り上げる2019年(仏紀2562年だそうだ)9月号では全200ページ中に40本近くある。中から興味深い記事をご紹介したい。以下の「」内は原文のままである。
「聞いて意味不明の漢文読経のままでいいのか」
力のこもったタイトルだ。意味がつかめない漢文の読経に人は苦痛を感じているのに、漫然と続けるのはおかしいのではという問題提起に、宗派を超えた11人の住職が見解を述べている。お葬式では日本語のお経を唱えますという住職あり、お経は唱えることに意味があり教義は他の手段で普及すべきですという住職もあり。どちらの言い分ももっともだ。
「お寺にとって最新最良の音響設備」
音響にこだわった本堂や設備を備えた住職が、音響に悩む住職に丁寧なアドバイスしている。檀家の高齢化などにより、音の聞こえ方や響き方への住職の関心が高まっているらしい。スピーカー、アンプ、ミキサーの選び方、費用の目安、音響施工業者への相談の仕方など専門技術的な内容。
「参道の公衆トイレの清掃も経費も寺院に課す行政問題」
有名霊場寺院の参道にある公衆トイレをめぐる揉めごとの現地レポート。市が建てたトイレを寺院が清掃・管理してきたが、30年たち色々問題が出てきているという。記事はやや住職寄りで、行政の積極関与を求めて締めくくられる。同様の問題を抱える観光地は他にもありそう。
法律相談「無断で御朱印が本に掲載されたり本堂がジグソーパズルにされたら」
寺院は著作権法違反を主張できるか、という『月刊住職』らしいお題。ちなみに御朱印のほうは「各寺院が工夫を凝らして書体を工夫」した「美術の著作物」とみなしうるが、本堂のジグソーパズルのほうは権利主張が難しいとのこと。
仏教の精神世界と、世俗的で現代的な紛争や問題。この両者が、どこか上手く溶け合わず違和感を残したまま表現されている、不思議な雑誌である。それこそが現代の仏教現場なのだろうか。いずれにしても、素人の私はその微妙な違和感が快感となり、次はどんな記事?次は?と、どんどん惹き込まれた。これは読むべき雑誌だ。今後、書店に行くたびに最新号をチェックすることになるだろう。そして時折購入してしまいそうである。(鉄)