ポジティブな言葉を自力で生産できないとき、人は本にそれを求めるのだろう。2019年12月のある夜、東京駅前の巨大書店、八重洲ブックセンターにて出会った本書は、充実した日々を歩むための語録やエピソードをまとめたもの。絵本のような装丁の黄緑色の表紙、帯には「クレイジーに、大胆に、生きることを楽しもう。」と大書。気恥ずかしい条件が整備されている。しかし私はこういう劇物を欲する状況だったようだ。購入し、最終に近い新幹線に乗った。座席で本書を開いて気が付いた。これは誰かの隣で読む本ではない。窓側のE席の人が私に関心がないことは分かっているのだが、落ち着かない。見開き2頁ごとに洗練されたデザインが施され、すごく良いのだが、次のようなパワーフレーズが36ポイント位の大きさで表現されていたりする。
SOMEDAY IS NOT A DAY OF THE WEEK」サムデイ(=いつか)、なんていう曜日はない
失敗は最高だ!
全80頁、どこを開いても、こういうフレーズが待ち構えている。しかしよくこんなに集めたな。
車内で読むのを諦め、帰宅してじっくり読む。すると本書が単なる楽観主義のたたき売りではないことがわかった。ポジティブな言葉やエピソードを残す人達も私たちと同じように悩んだ結果、その域に至ったということがじんわりと伝わってくるのである。また、単なるキャッチ―な言葉の羅列する本とは一線を画し、全体に流れを持たせている。
「真剣に働くけど、深刻にはならない」(サウスウエスト航空のビジネス指針より)
「研究によれば、リスクを避けて生きている人も、リスクをともなう行動をとっている人も、1年間に平均して犯す大きな失敗は平均2つだ。」
なるほど、いいこと言うよな。歳を重ねると、助言してくれる人が減る。発想を変えるために謙虚にこういうフレーズを受け入れるのもいい。
デザインも内容も凝りに凝っていてとにかく目立つ装丁なので、見かけられましたら一度手に取っていただきたい。今年の夏に重版された本書、特徴は黄緑色の表紙にでかい白抜き文字の「7」である。
最後に教訓。「目立つ自己啓発本は電車に向かない。一人の空間で読むに限る。」(鉄)