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この本がインドネシア語学習のスタンダードになる予感(【書評】『ワークブックインドネシア語 第1巻』森山幹弘ら著)

ワークブック インドネシア語 第(1)巻

ワークブック インドネシア語 第(1)巻

人口は世界第4位,歴史上も経済上も日本と関係の深い国インドネシア。しかしインドネシア語語学書は意外と少なく,書店での専有面積も広くはない。「アジア諸外国語」などとひと括りにされることもあり、悲しい。特に文法書が少ない。基本的な文法が比較的シンプルだからか。それとも需要がないからか。いずれにしても,会話の面では日本語にはないRの独特な発音や、「エ」の口で「ウ」と発する母音などを習得する必要があるものの,単語を繋いでいけば何となく通じる寛容さがある。

私はかつて「おはよう」「ありがとう」程度の言葉しか知らない状態でジャワ島へ渡った。現地で会話してくれたすべてのインドネシア人の方々が、私の先生だった。今でも日常的な読み書きにほぼ支障はないのだが、フォーマルな会話・文章作成に限界を感じる。この状況をブレイクスルーするため、本書を頼りに文法を一からやり直してみることにした。

2018年発行の本書、体系的なインドネシア語テキストではおそらく最新の作品である。3分冊、それぞれ100頁前後という抑えた分量の中で、基礎はもちろん,微妙にニュアンスが異なる類似表現まで,微細に解説している。

例えば、動詞punya(プニャ)とada(アダ)の用法について。

Dia punya mobil.(彼は車を持っている。)

Dia ada mobil.(彼には車がある。)

日本語にすると似たような意味合いになるが、punyaのほうは「車を恒久的に所有しているという意味合い」,adaのほうは「一時的にあずかっているという意味合いをふくむ」と解説される(128頁)。このように定型的な文法を超えた微妙な情報が随所に差し込まれている。ある程度インドネシア語ができる方が読まれても「そうそう!」と確認して楽しめる。

インドネシア語の体系書として長く王座に君臨してきたのは『バタオネのインドネシア語講座初級』(めこん、1989年初版)であった。『バタオネ…』に比較して、本書は扱う単語や表現も今風。かつ全体分量が3/4程度というコンパクト感が最後までやり切る励みにもなる(私は『バタオネ…』全389頁を結局通読できなかった)。もっとも、本書には長文はあえて掲載されておらず、かつ演習問題も多くはない。指導者がつく大学等での活用を想定しているのかもしれない。

令和の時代、本書がインドネシア語学習のスタンダードになると私は確信している。インドネシア語の世界にご興味のある方、きっちり学びたい方には、お薦めしたい。(鉄)

(『ワークブックインドネシア語 第1巻』森山幹弘+柏村彰夫+稲垣和也:著、三元社、1,400円+税)